蛇穴と書いて「さらき」と読む。こんな地名が奈良にあります。まず、初見では読めません。
蛇のとぐろや、土を紐状にして輪にして積み上げて作る土器をサラキと言うらしく、そこから関連された当て字ではないかと思われます。
さて、蛇穴という地名から想像できますが、蛇に関連する伝承があります。
かつて役行者に振り向いてもらえない女性が姿を変えて蛇になりました。その姿を村人に見られたが、村人から弁当の味噌汁をかけられて退散。井戸に隠れていたところを封じられた。それが今でも蛇塚として残っているというものです。
実際、井戸を封じた形の蛇塚はありました。本物の井戸というわけではなく、井戸を模した塚ということでしたが。
この蛇塚のある野口神社の祭神は竜神だそうで、水神とされることが多いです。実際、神社の近くが用水の湧き水があったそうです。
蛇も同じく水神とされることが多く、水乞いの儀式あたりがこの縁起の元かと思えます。
話の内容はといえば、山伏に恋するあまり蛇になったというところで安珍清姫を彷彿とさせます。ただ、味噌汁で撃退したというあたりはかなりオリジナリティーがあり面白いところです。
また、この縁起にちなんだ「蛇曳き汁掛け祭り」があるらしく、参加者に味噌汁を掛けるのだとか。
奇祭の類に入りそうですが、こういう祭りが現在にも残っているというのもまた、興味深いです。
参考URL:蛇穴の蛇曳き汁掛け祭り | 歴史を活かす地域の取組 | 奈良県歴史文化資源データベース「いかす・なら」
伝承だけではなく、痕跡らしいものが残っている所はとても楽しいものです。
今回の場所はこちら奈良県の怪異をまとめたのはこちら
怪異・妖怪地図 - 奈良県